一、世界はそれを成り行きという

 支払いの心配がなくなると思うと安堵してしまう自分もいるが、

「バルフォア殿。どうかお気になさらず。淑女に責任を負わせるは男にあらず」

 ここまで格好よく言われてしまっては任せざるを得ないというか、相手としてはもしかしたら引っ込みがつかないのかもしれない。男というのは半分以上はプライドで出来ていて、同時に繊細でナイーブな生物なのだとロニはシルバから聞いたことがあった。

 花を持たせるではないが、素直に頼って相手を立てるのが礼儀というような気もしてくる。

 というか淑女と言われました! とロニが興奮気味にシルバへ報告すると、ああ良かったね。と気のない返事が飛んだ。

「まあ、見ず知らずの人間に全てを任せるというのも、難しい話だと思います」

 返答に困るロニを慮ってかフリックは言う。

 信用信頼というのは一足に埋められるものではない。

 たとえ知り合いであったとしても、こと金銭絡みの場合においてはその後の関係に支障をきたす恐れが大いにあるうえに、悪く言えば弱みを握られることにもなる。

 また、だからといって助けようとしている側が悪意はないと意志を開示していたとしても、信頼関係ができあがっていなければ全く意味がないのだ。

「すみません……即断できなくて」

「謝らずとも良いです。ではこの件は一旦保留ということにしましょう。ところでガフ殿、バルフォア殿、お二人はこのあと行き先はどちらに?」

 その問いに、二人は一度顔を見合わせた。そしてロニが答える。

「僕たちはクライムサイドまで行くつもりです」

「おお、そうでしたか」