序章 青天霹靂/マ王降臨

「う、あ、がq、あytあ、zvあああああああああああああああgあああaaaaaあああ――――!!!!」

 壮絶な叫び声が辺りに木霊する。

 全身を電気のように駆け巡る痛覚。約三ヶ月、電脳世界で生きてきたサージタリウスは許容を超えた痛みに、地面をのたうち回る事しか出来なかった。

「――ぐが、rkpあ、ろ、グアウト!!」

 この世界において最強最速であるはずの言葉を吐き出すも何も起きない。

「ろぐpa、アウトおおオおおおオオオ!!!!」

 眼前で絶叫しながらのたうち回るサージタリウスを見下ろしながら、青年は口元を僅かに吊り上げた。そして心底楽しそうに言葉を紡いだ。

「回線は接続した。ほら、思い出したろ? 痛みってやつをよ」

 返答は、無い。

 叫び続ける男を支配するのは、最早まともな思考ではなかった。ただただ湧き上がってくる飽くなきまでの痛みだった。

 痙攣したように男の身体が跳ねる。

「――がガガが、ろ、ぐあウ、と……!!」

「無駄無駄。忘れた訳じゃねえだろ? テメエの体の基本性能。痛みを感じない代わりに許容量を超えた時の強制終了は無い。あん? じゃあ、なんで痛みを感じんのかって? さっき言っただろうが。だから、痛みの回線を繋いでやったんだよ」

 青年は「まあ」と一拍置いて、

「聞いちゃいねえか。それじゃあそろそろ終わらせようか?」

 吐き捨てた直後、右手に黒い光を集束させ始めた。

 徐々に加速していく黒の集束は掌大にサイズを留め、握ると同時に拳に馴染む。拳そのものを覆うように揺らめく漆黒のそれは、闇より黒く夜より深かった。