第一章 日常茶飯/街の風景A

「いやだから違うんだけどねー」

「そういうるーずなところから男女間の不純異性交遊、みだらな行為、ただれた関係が始まるのだ。わっちがその『かれし』のくさった性根を叩き直してくれようぞ!」

「ああもう、彼氏でいいよ」

 合流を果たした人々の行く先はやはり疎ら。各々目的地は違うのだろうが、しかし全ての道に繋がる新東京駅方面の大通りは混雑している。

 夜道を照らす店の灯り。それに群がる人々。

「しかしなんというか、また一段と増えたのう……人が」

「まあねー。なんてったって天下のGUILD様よ? ゲームに使う機器なんて無料で貸し出しだかんね。サービスしまくりの儲かりまくり」

「発展はよいことなんだろうけども」

「うん。法に関わる事が起きやすいって実態もねー」

 この世界、現実に近すぎるという観点から、警察──いわゆる公的機関が何かと介入する場合がある。

 分かり易い例で言えば、先ほどの女子高生補導の件。

 もっと分かり易いところでいくと薬物系のいざこざであったり、強姦、窃盗などの事件である。

 たかが電脳世界といって侮っていては泣きを見る。薬物は現実のモノと寸分違わず精神を壊すし、罪を犯せば現実と変わらず法で裁かれる。

 ここは確かに電脳世界だが、蔓延しているのはただの人間だ。要は、大都市がもう一つ存在しているようなイメージである。しかもログアウトという、ある種、最強最速の逃げ足があるから安易な考えで犯罪に手を染めてしまう者も多い。それでもログイン・アウトの形跡で足がついてしまうので、結局のところ無駄足といった感じではあるが。