第一章 日常茶飯/街の風景

 しかしながら痛い事はなるべく避けたい虚弱体質人間が、微弱ながら痛覚の概念が存在する世界に、わざわざ飛び込もうとするのだろうか?

 もしかすると、それはただ単純に怖いもの見たさだったり、新し物好きだったり、という性格に起因するものなのかもしれないが。

 猛は思う。

 この、自分自身が映し出されるゲームをプレイする事で何かが変わるのではなかろうか、と。

 猛は願う。

 叶うならば、その何かが変わる瞬間を見つける事が出来れば、と。

 意を決するとまでは言えないが、ほんの少しばかり腹を括った猛は、差し出された金髪男の手を掴んで、言った。

「……なぐ、殴らないんですか?」

 単純明快。

「キミを殴る理由がないね☆」


 金髪男が笑って吐き捨てた。