第一章 日常茶飯/街の風景

 飛躍的革新など生温い。超越的革命とでも呼ぶべき現代ゲーム集大成の真っ只中にいる少年は、心底楽しそうな顔をしながら小刻みに震えた。そして両腕を空に向けて突き上げながら、

「ゲームGJビバGUILD!!」

 ついに爆発した。

 周りの視線が一斉に少年へと向けられる。

「ひっ! ご、ごめんなさい」

 反射的に膝を抱えて縮こまる少年。

 人々の目は一瞬で少年から逸らされ、再びそれぞれの行動へと戻っていく。

 それでも少年は小さくなり続けていたのだが、ズボンの右ポケットに突っ込んでいたスマートフォンが突然鳴り響いた。

 一体何事かと思いつつもスマートフォンを手に取り、画面をのぞき込んでみれば、メールが一件届いている。そのまま内容を確認すると圧縮された添付ファイルがポツリ。

 よく見てみれば、送信元はGUILDだという事が分かる。

 これがもし登録した覚えもない有料サイト等からの物であったなら、問答無用で無視だったのだが、送信元が送信元である。

 ――配信メール……かな?

 多少疑心しつつも、少年はファイルをクリックした。

 圧縮されたそれが、内臓データである解凍機能で一瞬の内に展開され、機械的なアナウンスが――


   ハロー_
   ユーザー名を確認中_
   ***************

   認証完了_

   チュートリアルを開始します_


「え……?」

 スマートフォンの画面を見つめながら、少年は間抜けな声を吐き出した。

 耐傷機能に優れた特殊な液晶画面には、こんな文字が紡がれている。