五、そして、
『神々の黄昏』というのは世界を創り直すために行う戦争である。その戦争を神の側であるはずのブリュンヒルドが止めてくれと言い残して言った。
これについてアルヴィンスは、こう推測する。
「ブリュンヒルドは、もしかすると戦乙女の中では異質な存在だったのかもしれん。己れたちが収容されていた塔の見張りが異様に手薄だった事にも違和を感じたしな。普段の監視体制では脱獄はおろか、会話すらままならない。彼女は己れたちを意図的に開放したのではないだろうか」
その後、様々な事を考察してみたが、答は分からない。
彼女は死んでしまった。
なんだかやるせない気持ちになってしまうロビン。曲がりなりにも仇敵を倒したというのに。
ただ、その身に宿った力が未だ消滅しないということは、怒りの根源も消えてはいないという事になる。
四大(フォルス)とは思いの力。
その場所に至りたいと強く思えば至ることができ、地を穿つ大剣が欲しいと懇願すれば召喚することができる。
ロビンは『妹の居場所』と『本当の敵の居場所』に至りたいと強く念じた。だが、ヴァルハラに至った時のように上手くはいかなかった。
ただし不発という感覚ではなく、誰かに効力を掻き消されているというニュアンスで。
至れないのではなく、妨害されている。
手綱を握るアルヴィンスが言う。
「それほどまでにこの道は険しいという事だ。妹御を助け出す道というのは」
もっともだと苦笑するロビン。
しかし絶望はしない。
強い思いは確かな力になる事を、知ったのだから──