家族会議

 近隣の楽しそうな家族の会話が聞こえるくらい、今うちの居間は静まり返っている。仲が悪いわけでは無いが今日はある問題が起きた。

 取り囲んで見つめるのは、母と書かれてプリンの容器。ただのスーパーで販売されてるプリンならこんなことにはなんなかっただろう。

 お取り寄せ二年待ちの超高級プリン。家族六人、父、母、祖父、姉、俺、弟。全員分ちゃんとありそれぞれが保管していたはずのプリン。俺は配られた時に食べた。母は冷やして風呂上りに食べると意気込んでいたが、母が風呂に入っていた四十五分の間に母のプリンは消えたのである。

「早く自首しなよ、みたいテレビ見れないじゃん」

 姉が他人事のような一言を言うと母の人にらみが飛んでくる。母はご立腹だ。

「とりあえず、私がお風呂入ってる間にみんな何してたか行ってみなさい!!」

 犯人はこの中にいるのだ。

「俺は、ビール呑みながら野球見てたぞ?」

「私は二階で雑誌読んでた」

「俺はゲーム」

「僕とおじいちゃんは僕の宿題やってたよ」

 一時の静寂に包まれる。

「お姉ちゃんだけ居間にいなかったわけね」

 母が姉を疑い始めた。確かにこのプリンが届いて一番喜んだのは、母と姉だ。

「ちょっと待ってよ! お母さんがお風呂に行く前から私、二階にいたのよ? 今まで降りてきてないし」

 冷蔵庫がある台所には必ず居間を通るので、降りてくれば見られるはずだ。確かに姉は降りてきてない。姉の意見が本当だと俺と父が頷いて賛同する。

「じゃあ、唯一冷蔵庫にいった痕跡があるお父さん?」

「待てって、確かにビールは冷蔵庫に入ってるけど、母さんが出してくれた一本しか呑んでないよ、母さんとの約束だからな」

 見つめ合って惚気けんな。犯人を探せ。

「俺は父さんの隣に座ってたからわかるよね?」

「あー、食べてなかったな」

 となるとお爺ちゃんか弟のどちらかであるが……

「さだこさん、飯はまだかの?」

「お爺ちゃん! さっき食べたでしょ? あと私は孫のえみ! せめてお母さんに聞いてよ!!」

 お爺ちゃんはこの通り、ボケが進んでしまっている。

「お前、お母さんが風呂上がってくるまでお爺ちゃんと一緒にいたか?」

「いや、お腹痛くてトイレに行ったからその間はわかんない」

「決まりだな、お爺ちゃんならしかたないな、母さん明日駅前のケーキ屋でケーキ買ってくるから許してやってくれよ」

「お爺ちゃんなら仕方ないわね……」

 こうしてこの事件は幕を閉じたが、俺は真犯人を知っている。弟と会話したときに見たのだ。口に小さく黄色い何かが付いていたのを……