棺桶
思いを届ける、楠木葬儀屋、丁寧な仕事に臨機応変な対応。ご好評いただいて12年、最大のピンチを迎えている。
「なんで棺桶準備できてないの!?」
「違うんです、まず違うんです」
「棺桶って言ったよね? この職業で棺桶って言ったらわかるよね? 君が準備したの何!?」
「……カンと風呂桶です」
「だよね!? しかもカンに関しては空きカンだね! ゴミだよね!」
未来のことを考えて新人を育てようと思ってこいつを雇ったのが間違いだった。
「でも! スチールカンですよ?」
「丈夫さの問題じゃねーんだよ!」
寸法し頼んだはずの棺桶はどこに行ったのだろうか、葬儀は明日。間に合うと言えば間に合うのだが、ここにこいつを置いて大丈夫だろうか。このあと、ご遺族の方々との打ち合わせがある。打ち合わせをしていたら棺桶の準備は間に合わない。
違う、俺が動いたらダメだ。こいつが動いてそして会社もこいつも大きくなるんだ。
「お前、棺桶取ってこい。 いいか? 頼んだところあんだろ? どこに頼んだ?」
「高橋林業です」
「木から!?」
「立派に育つまでに40〜50年かかるらしいです」
「お前、クビ」