動物園

 午後8時辺りが静まり返るその時間に奴らは動き出す。

「会議するよー、みんないるー?」

「あー全員、集まって…… ないな」

 赤い目が周りを見渡し、一点のベンチに目が止まる。だれも座ってないとこを周りにいる奴らも確認する。

「また遅刻か」

 一番高い位置にいる奴がそうつぶやいた瞬間に周りの肩がビクっと震える。



「すいません遅れましたーー」

「遅いんだよ、くそボケーーーー!!!!」

 遠くから走ってきた、四足歩行の獣、ライオンに飛び蹴りを食らわせるのはここ、アニマルキングダムのボス。ふれあい広場代表ハムスターのスピカくん。

 ライオンのほっぺにスピカくんの足がめり込む。周りがさらにビクっと肩を震わせた。

「てめー、サボるのは昼間だけにしろや! 夜の広場会議は時間厳守だ!!」

「ひぃーー、すいません マジすいません」

 ライオンのたてがみを引っ張るハムスターなかなかシュールな光景がそこには広がっていた。



「定例報告会議やるぞー」

 スピカ君は柵の上に登るとそれぞれのエリアの代表を見る。

「それじゃ、私から日本の山里エリア代表の狐です。 最近はリス系の小動物を差し置いてくまのピースくんが人気になりました。 理由は最近始まった公開餌付けのさいにおねだりのようなポーズをするからだそうです。 来てくれたお客様は満足をしてらっしゃるので腱鞘炎にならない程度に続けさせる予定です」

 狐の報告を聞き興味深そうに聞く他の動物達、『やってみようかな』なんて声もチラホラ聞こえる。

「次「エンチョーのクルマがキタヨー」

 次の動物に報告させようとした矢先に見張り役の九官鳥が来客の知らせを持ってくる。周りの動物達がザワザワと騒ぎ出す。

「落ち着けお前ら、騒がず迅速に自分の寝床にもどるんだ!」

 ボスらしい指示をした瞬間、強風が吹きスピカくんは柵から落ちてしまう不幸なことに周りの動物は支持を聞いた瞬間走り出してしまっていた。

 登っていた柵は猿山の柵、軽い谷になってるためさすがのハムスターも落ちたら一溜りもない。死んだと諦め目をつぶったスピカくん。 

 ……嫌な浮遊感は無く、目を開けてみると真っ暗な暗闇の中にいた。地面は少しベタベタする。

「死んだのか……」

「ちょっと待って下さいね、今吐き出しますから」

 独り言をつぶやいた瞬間、どこからともなく声がする。その声の主はあの怠け者のライオンの声だった。

 急に光が射し込み、光の方へ行くとふれあい広場についていた。

「俺も戻りますんで」

 そう言われ後ろを振り返るとそこには、猛スピードでかけていくライオンの姿があった。

「サンキュー」

 誰に聞こえるわけでもないその声は夜の動物園へと消えていった。



 これは動物園の夜の動物の話。