眼鏡
「俺を色眼鏡で見やがって!!」
朝7時30分、4月上旬。
入学式が楽しみすぎて早くきた僕は、なにかいいことがあるんじゃないだろうかという期待に早くも裏切られていた。
昔の人に問いたい。早起きは三文の得じゃなかっただろうか?
「聞いてんのかおい!」
彼とは、体育館で出会った。体育館の入り口にいた綺麗な女の先輩に指定された座席を教えていただき座った瞬間だった。3つ前の座席に座っている少年がすごい剣幕で怒鳴ってきたのだった。
「すいません、これは目が悪くてつけてるだけでして……」
「ふざけるなよ!!」
去年死んだ祖父へ僕はどうしたらいいでしょうか……
「お前はいつもいつも!」
んっ? 彼とは初対面だったはずだ。
「進学先までついてきやがってお前!!」
何だろう。あらぬ疑いを欠けられている気がする。
「ストーカーかお前は!」
彼の発言でちらほら集まりつつある生徒達が僕らのことを一斉に見てきた。
「えっいや、君とは初対面だよ??」
「しらばっくれんのかお前!」
最近の若者は聞く耳も持ってくれないのだろうか。あっ同い年だ。
強気に行きたい僕だが、目を細めてくる彼に少なからず恐怖を抱いている僕には無理だった。
「あれ? あんたもう来てんの?」
僕の肩を叩いてきてくれたのは、幼なじみだった。この時ばかりは彼女が女神に見えた。
「なんだよ? お前もこいつとグルか?」
幼なじみにまで喧嘩腰の彼に、僕は恐怖を抱いている。が、幼なじみを恋愛対象として見てる僕は勇気を振り絞って立ち上がった。
「かっ彼女はかん……」
立ち上がってカッコイい台詞をはこうとした瞬間、幼なじみが僕の眼鏡を奪い、喧嘩腰の彼にかけた。
これ以上争いごと増やすなんてこいつ女神じゃない悪魔だ。
眼鏡を無理やりかけられ怒っているだろう彼を見ると目を見開き僕と彼女を交互に見ていた。
「……お前? 誰?」
どうやら彼も僕と同じで眼鏡族だったみたいだ。腹を抱えて笑っている悪魔と照れくさそうに笑っている彼に僕は、底知れぬ怒りを感じ体育館に響きわたる声で言ってやった。
「俺を色眼鏡で見やがって!!」
意味など気にしなかった。