どうぶつ

 唐突な始まりで大変申し訳ない限りではあるが、どうやら、妹が捨てられていた動物を拾ってきたらしい。

 今年で六歳になる妹が動物を憐れむ気持ちはよくわかるし、生き物と接することで人間としても成長できるからその動物をうちで飼うのを許すのもやぶさかではないがしかし。

 しかししかししかし。

 だからといってオッサンを飼うことなんて、許せるわけもないだろう。

 ネコ耳をつけたハゲ頭のオッサンが段ボールの中で膝をかかえながらつぶらな瞳でこちらを見ている。

「うみゅ……?」

「うみゅ? じゃねえよ。ぶっ殺すぞ」

「うにゅぅ」

「あ?」

「うみゃぁ」

「微妙に変えてくんなぶっ殺すぞ」

「じゃあ、どうすれば猫っぽくなりますかね?」

「俺に聞くな。つうかお前、自分は猫じゃねえって言っちゃってるじゃねーか」

「にゃ?」

「思い出したように猫っぽい言い方したな今」

「う……頭が」

「どうした」

「…………ハゲて、いる」

「見りゃわかるわ」

「まさか……大魔王ハゲタムーアの呪いが、私にも」

「おい。話しを逸らすな。俺はな、妹の優しさを無下にしないために仕方なくお前と対話してるんだ。しかもそっちは道端に捨てられてた側だぞ? 捨て猫じゃなくて捨てオッサンだぞ? まさかとは思うがお前、妹になんかしてねえだろうな? 警察呼ぼうか? 呼んでやろうか? ん?」

「まて、落ち着くんだ少年。私の話を聞いてくれ」

 ネコ耳をつけたハゲ頭のオッサンが段ボールの中で膝をかかえながら至極真面目な顔をしてこちらを見ている。

「私は大魔王ハゲタムーアの呪いでこの姿にされてしまった勇者なのだ。妹さんからはポーション(食べかけのチョコ)を貰って体力を回復させてもらっただけなんだ」

 オッサンを信じ、これまでの非礼を許しますか?

「いいええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」