くりすます

 乾燥だけならまだしも、それに加えて刺さるような冷たさを孕んだ十二月の風が身に染みる。

 ましてやここは港町だから海が近いわけで。しかも日本海だからその寒さったらない。

 偏西風バカヤロー。

 せめてもの救いは雪が降っていないこと。

 例年だったらこの時期は濡れ雪だか粉雪だかドカ雪だかがそこいら中を真っ白に埋め尽くすのだけれど、温暖化の影響か今年に関しては今のところ積雪は一度もない。

 だから何だって話なのだけれど。だったらどうしたって話なのだけれど。

 少なからず、ザマァとは思っている。

 ただのクリスマス乙。ホワイトクリスマスざまぁ。

 というかよく考えろよ。クリスマスってただ単純に誰かの誕生日ってだけだろう?

 それをなんでわざわざ見ず知らずの僕らが祝ってるんだ。

 電車で向かいの席に座ったオッサンの誕生日を祝うのか? 僕らは? 祝わないだろ普通。

 ああ確かに僕には人生の伴侶はいないし、それどころか彼女すらいない。

 ひがみ?

 いや。いやいやいや。違うから。断じて違うから。

 冒頭の肌寒さの根底には人肌が恋しいって思いが込められてるとかそんなの君たちの深読みだからね。僕寒いだけだし。ただ単純にうら寒いだけだし。うん。いやほんとこれ。っていうか僕んちキリスト教じゃないからクリスマスとかアレだし。祝う必要ないっていうか宗教的にそんなイベントには流されないっていうか。日本は八百万の神がいるからもしかしたら、もしかしたら偶然そのなんていうの、キリストに近似したクリスマス関連の神がいたりして、大切な人たちのことを密かに応援してるみたいな奴がいるかもしれない。ううん。違う違う。全然違うから。これ別に僕が彼女ほしいからとかじゃなくって。そんな邪まな気持ちなんて持ったことないからね僕。どちらかというと愛されるより愛したいタイプだから。追われるより追い求めたいタイプだから。そうつまり僕は天性の狩人なんだよ何言ってんのこれ?

 だから、もしもたとえば万が一、こんな雪も降らない聖夜に空から美少女サンタが降ってきたとしても僕は驚かないしそれはただのシータだって思うし。うん。

 要するに────


 !


 いまなんかものすごい音したんですけど。

 家の屋根になんか突っ込んできたような音したんですけど。

 …………これってもしかして……シータ降ってきたんじゃね? 降ってきたんじゃねえの?

 いやいやいや。いやいやいやいやそんな訳ないから。現代において飛行石持った女の子が空から落ちてくるなんてそんなベタなことサンタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 ミニスカ! ヘソ! ニーハイ! 美少女! びしょうじょ!

 ほう…………白パンか。

 神様……ありがとう。