目が覚めたら

 目を覚ますと知らないお爺さんが目の前にいた。

 祖父とかではなく、初対面のお爺さんがこちらを見ている。

 まずエルヴィンとか言う子供の姿になる前の俺に親族なんていなかった。

 小さい時に捨てられ、施設で育ち、サラリーマンになった。

「おっ、目を覚ましたな? 急に目を覚まして体を動かしたから、身体がびっくりしたんじゃろうな、どれ身体起こせるかい?」

 背中に手を回され、補助を受けながら身体を起こす。

 ベッドから座って見える風景は先ほどと同じだ。夢じゃなかった……

「うむうむ、不思議なことに筋力はあるみたいじゃな? どれ、ワシの指を力一杯握ってみてはくれんか?」

 差し出された指を力一杯握る。優しいお爺さんに似つかわしくない、ゴツゴツしたたくましい指だ。

「うむ、ほんに不思議じゃのー 立って歩ける筋力はあるが体力はあまりないようじゃ、無理して歩きまわるとまた気を失うから気をつけるんじゃよ?」

 俺のことを思って言ってくれてるのだろうが俺には疑問がある。

 お爺さんだれ!?

 先ほどの集団の中にはいなかったはずだ。

 白衣なのか、白いローブをまとって、頬にあるノの字傷がインパクト強すぎる。

 多分、優しく笑ってくれているんだろうがただただ怖い。

 父親と名乗る人が若頭で多分この人が親分だ。

 もしかしたら、そっち系の家系なのかもしれない。

「おー、自己紹介しとらんかったの? カール・リバル、この町で聖者をしておる」

 そっち系の人じゃなかった。とゆうか聖者ってなんだ。

 カールさんより、先ほどの女神様のほうが聖者っぽいのだが。

「聖者って言っても伝わらんか? 町の者が病気をしたら治してやる者のことを聖者って呼ぶんじゃよ」

 つまり医者か。その顔でか。

「明日は午後にくるのでな、それまで安静にしてなさい、普通の食事もまだダメじゃからの? まあ、そこらへんは料理長に伝えておるから心配はしとらん、エル坊は出されたもんを食べればいいだけじゃからの」

 言いたい事だけを言って出て行った。