Code4:PECHEUR

 発動直前で待機状態に入っていたコード・マジックが発動。ヒレは赤く発光して瞬時に魔法陣を形作り、現れた炎弾がペッシャールに襲いかかる。

 コールガのコンセプトは不可避の弾幕。本来ならば一対多の状況で叩き込むべきものを、一機に集中して撃つ。

 回避の余地はない──と思われたが、ペッシャールは一撃目をひらりとかわし、その先に向かっていた二撃目を回避。機体をひねり、回し、降下と上昇を即座に切り替え、速度を保ったままコールガの弾幕をくぐりぬける。

 恐怖心を廃し、隙間ともいえないわずかな空白に機体をねじこむ、その度胸と素質。

「────っ!」

 無傷のペッシャールを前に、ブラッドは弾かれたように操縦桿を倒した。がむしゃらな回避。その意識にプライドが入り込む余地などない。体が震える。寒気が走る。目を疑う。

 思考する。

 ペッシャールは幸運だったのか? ──否。ブラッドの運が悪かったのか? ──否。コールガのAIに異常が? ──否。

 奇跡ではない。奇蹟だ。ペッシャールの技量とディアーブルの運動能力の相性は抜群。故にたやすくヒトの限界を超える。不可避の弾幕に対し、必然の回避をやってのける神のような領域へ至らせる。

 ありえない、と否定することなどできない。文字通り目前で実行された曲芸飛行を、ブラッドの脳はしっかりと記憶している。

 思考する。

 ドッグ・ファイトを得意としないコールガが、その切り札をもってしても墜とせないペッシャールに勝てるのだろうか?

『──おイ、腑抜けるなヨ』

 鼓膜を叩いた声に、ブラッドの意識が現実に戻ってくる。