Code2:HIMINGLAEVA
隠して、押しこめて、凝縮された「なにかをぶち壊したい」という感情。その片鱗が姿を現している──と。
対するクレイグはといえば、ただうっすらと苦笑を浮かべただけだった。
「君は容赦がないな」
「あってどうするンです? そんナもの、望んじゃいないでしょウ?」
「その通りだ」
同意したのちに立ちあがり、告げる。
「改めて繰り返す。今回の任務は帝国の元ジョーカー、戦艦レヴィアタンの撃沈が目的だ。ブローズグハッダの高火力によって同戦艦を沈める。今回が作戦初参加となるコールガには、その護衛を務めてもらう。詳しい状況は追って伝える」
クレイグ・アークライトの口調は揺るがない。
平坦で冷静で、ひとつ間違えれば事務的にも聞こえてくる指令ではあるものの、その声は重い。へたに張りあげられた声よりも、聞くものに緊張感を与えてくる。
誰よりも軍人らしくない。同時に、誰よりも軍人らしい。
その性質は、独立心も愛国心も特に抱いていないブラッドからすれば、この上なくありがたいものだった。自分の信条と関わりのない部分で盛り上がられてしまった場合、モチベーションは反比例的に下がっていく。
個人的な信条や感情など含めず、坦々と標的だけを示すクレイグの「やり方」は──おそらく『波の乙女計画』に適応しているのだろう。ただ一つ、「死に瀕したことがある」以外に共通点のない、経歴も出身も性格もバラバラなテスト・パイロットたちをまとめるためには、最適な方法なのかもしれない。