Code2:HIMINGLAEVA

「──ったく、テストフライトだってのに、散々だったな」

『遠方に敵軍隊がいることは、あらかじめ通知していました。注意力が散漫だったのでは』

「それは……はは、言われたら返す言葉がない」

『笑いごとではありません。危機的状況だったということを理解しているんですか?』

 コールガ内部。

 戦闘機動時からは一転して、コックピットには和やかな空気が満ちていた。

 ……とは言うものの、もともと一人が搭乗するようにしか作られていないコックピットには、もちろんコールガのパイロットであるブラッドしか収まっていない。

 ブラッドの会話相手は、管制室にいる彼の専属オペレーター、アビゲイル・ホプキンズである。口調と同様、堅苦しい性格をしていそうだと思われているアビゲイルは、その実、重大な軍規違反さえなければ柔軟な対応をする人間だ。

 でなければ、回線を使用した私語など自分にも他人にも許すはずがない。

『見れば分かるかと思いますが、貴方が落とした三二七機は全てラ・モールです。帝国軍の亜音速戦闘機。自分で言っていたでしょう? コード・マジックの発動に時間のかかるコールガにとって、兵装をドッグ・ファイト用にカスタマイズしたラ・モールは天敵だ、と』

「……そんなことも言ったなぁ、確かに」

 片手で操縦桿を固定しながら、ブラッドは頬をかいた。視線は何もない中空へ。

 通信では音声しか送受信できないはずなのだが──数秒の沈黙ののち。

『覚えてなかったんですね』

「い、いやいや、そんなことはないぜ? うん。あの弾幕ブち込めるようになれば敵なしだもんな?」