第一章 トラブルは横暴幼女と共に
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「──!?」
爆発音。
骸骨の腕が地面に着弾すると同時、爆発が巻き起こった。
吹き荒ぶ爆風が砕け散った石畳を弾き飛ばし、爆煙が立ち込める。
骸骨たちの殺到を寸でのところで避けたリッキーは、煙をかき分け裏道を駆け抜けて先の通りへ飛び出した。
小脇に抱えた幼女を抱え直しながら後ろを振り向いて確認すれば、追跡を続ける骸骨五、六体の姿が見て取れる。
と同時に、後方にいる白の人外たちが例の音源であったことを認識する。
原理は分からないが、あの骸骨は意図的に爆発を起こすことができるようだった。
「傘借りるぞ兄ちゃん!」
言ってリッキーは、近くにあった東方風の男のバンガサ数本を広げて裏道に突っ込み、さらに木箱と空樽を乱雑に投げ込んで即席のバリケードを作り上げた。
「悪いな!」
おざなりな謝罪を置き去りに、リッキーは再び走った。
これでほんの僅かでも時間を稼ぐことができれば──しかし爆発音が鳴り響き、直後には突貫工のバリケードがはじけ飛んだ。
それを皮切りに、通り沿いでは往来する人々の悲鳴が一気に伝染。傘をすすめていた東方風の男は爆風に巻き込まれ、数メートル吹き飛んだらしかった。
けふ、と小さく咳払いしてリッキーは道脇の積み荷を蹴り転がしながら走る。
「おい! バカ精霊! 生きてるか!」
脇に抱えた幼女に問うも返答はない。
代わりと言ってはなんだが、人流をひらりと躱しながら後方を走る白の人外たちがカラカラと珍妙に笑う声が聞こえてくる。
──クッソが! 何なんだよあの骸骨共は!
たまらずリッキーは胸中で悪態をつく。