第一章 トラブルは横暴幼女と共に


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「で、今日は何の騒ぎ?」

 アイリーンは腕を組みながら石畳を見下ろす。視界の中には、胡坐をかいて不機嫌そうにするリッキーがいた。心なしか右頬が腫れている。

「何ってお前、祭りだよ祭り」

「祭り?」

「おう。ただし、あの青瓢箪をブチっと殺す血祭りだけどな」

 言うと同時に持ち上がるリッキーの腕。指差す方を見てみれば、イアンが噴水の縁に腰を掛けているのが見えた。

 イアンは首を横に振りながら独り言のように、しかしリッキーに聞こえるようにぼそりと呟く。

「血祭りは名詞じゃない。これだから脳筋は……」

「ああん? 言葉のあやだろうがイアンくんよぉ」

「今度は言葉のあやと来たか……言語障害甚だしいな。脳の検査でもしてやろうか?」

「あんだとテメエ。やんのか」

「望むところだ」

「やめなさい!」

 ガン! と、打撃音が響く。

 アイリーンの拳がリッキーの頭部を殴打したらしい。立ち上がりかけたイアンはそれを見て再び腰を下ろした。道行く人々がその光景を見ながらクスクス笑って通り過ぎていく。

 ここはアザリア大通り・中央広場。

 白亜色の煉瓦と獅子の彫刻で形成された大きな噴水があるこの場所は、大通りと分岐した小道、裏道を繋ぐ合流地点。最も人通りの多い場所だ。

 そんな所に一対の鬼がいるともなれば普通なら街がパニック状態に陥ってしまうのだが、今はそれを抑え込む事ができるストッパーがいる。

 女門番アイリーン・フォレット。

 通称、南門のアイリーン。

 街で度々巻き起こるリッキー対イアンの決戦を止める事ができる唯一の人間だ。しかも腕力で、である。