陰陽幼女

 洋風の街並みに雰囲気をぶち壊すように作られた神社に彼女は存在する。

 阿部野 比美子、デュランダル・オンラインでは知る人ぞ知るやり手の占い師である。

 信じてない者も多いが彼女の実力は本物である。

「でました、これから三日と七時間二十二分十四秒後、その者はあなたの元に現れます」

「ありがとうございます!」

 また一人の客を導いた比美子は座布団に座り、お気に入りの洋楽を拝殿に響く音量で流す。

 拝殿の開かれた戸から見えるのは、オシャレなお城で、うっとりとした表情でお城を眺める。

 比美子がここに神社を建てたのはあの城が綺麗に眺められるポイントがこの場所だっただけのこと。

 比美子は普段、本気で占いをしない。

 比美子が本気で占いをしたことがあるのは二回だけ。

 北田という青年の未来についてと、自分がここにいる理由だけである。

 そして今日、三回目の本気を出す客が訪れる。

「来ましたか」

 流れている洋楽を止め、参拝客を拝殿に通す。

「いらっしゃいませ、そこにおかけください」

 先ほどの参拝者の時とは違う、本気の雰囲気が拝殿に流れる。

 夢か幻か比美子の背後に、七本ある狐の尻尾が現れる。

 狐の尻尾はユラユラ揺らめく、奥の本殿が透けるので幻なのだとわかる。

「あなたの運命も何重にも絡まっています。ここに来たのもまた運命、あなたも私もこの運命から逃れることはできません。見える未来は何重にも絡まった運命が一本に解ける時すべての答えが解けます、その未来は……すみません、まだ力が及ばぬようです、あなたに立ちはだかる者の思念が強いようです」

 それを聞いた参拝者は立ち上がり、拝殿を後にする。

「逃げなければきっと道は開きます、えむちゃん」

 立ち去る参拝者の背を見ながら比美子の声は消えるように小さくなる。


 ──ログアウト、処理中です──