契約者 オフライン
園内にはいつも二人の泣き声が響いていた。
髪を結ってる女の子、マキが泣けば、邪魔にならない程度に髪をまとめているミキも泣く。
どちらかが泣き止めば、もう一方も泣き止んだ。
そんな二人を園内のみんなは微笑ましく、見守っていた。
身寄りが無い子達が集まるこの園は、みんなが支え合って生きていた。
いた、過去形、この園には今、二人の子供しかいない。
今日も園に泣き声が響く。
マキとミキだ。
園は、潰れた。
園にいた子供たちはバラバラに引き取られ、連絡先もわからない。
園の大人たちも、行方不明になっていた。
ここにくる大人はただ一人だけ。
どこだかのゲーム会社の社員。
無表情で言いたいこと告げて、マキとミキの反応を見て帰る。
この男が言うには、この園はこの男の会社に買収されたらしい。
マキとミキが泣き叫ぶ、園のホールにまたその男はやってきた。
「昨日ぶりだね、ちゃんと置いていっている食事は食べているみたいだね、今日も引き取り先を紹介しに来んだ、今回はちょっと変わった人でね、自分の駒として働いたら願いを叶えてくれるそうだよ」
男の言葉に二人は泣き止む。
一度家族を失い、家族の変わりになっていた園の家族にまた会いたい、暮らしたい。
泣き止んだ二人を見て、男は初めて二人の前で表情を表に出す。
悪い笑顔。
「決まったみたいだな、すぐに準備をしよう、もちろんここから離れる必要は無い、準備はこちらでしよう」
笑みを浮かべたまま、スマホを取り出し男は園から出ていく。
残された二人は、お互いの手を握り決意を共有する。
またみんなで笑える日を夢見て、お互いに笑みを浮かべるのだ。
花が咲いたような笑顔を。