シーンC

 はぇ? 『魔女狩り』ですかぁ?

 彼女なら三日前にここを出ましたけど。

 いえ、『首輪』なら、ちゃーんと付けましたよ。でもギリギリでしたねぇ。本来なら六日はかかるはずなんですけど、やはりと言うべきか流石と言うべきか、ビジターのスペックには驚かされますね。こちらに保管してある魔導書八十五冊の解釈を、たったの四十八時間で終わらせたんですから。

 ……?

 妙な顔をなさるんですね。……後悔でも?

 でも、彼女に魔導書の解釈を促したのはアナタですよ?

 まあ、今さら言い訳だったり、言い逃れだったり、誰かに責任を押し付けるなんて、アナタは死んでもやらないでしょうけど。

 ただ、彼女は、『魔女狩り』は危険です。

 八十五の魔導書を体現するパーソナリティを得た彼女はもはや、かつてのアナタと同等かそれ以上であることは間違いありません。

 え? ああ、そうですね。デュランダル抜きのアナタと同等かそれ以上、という風に言った方が正確ですね。

 さっきも言った通り、保険として『首輪』は付いていますから暴走するなんてことはないとは思いますが、それがきちんと機能するかということまでは保障できません。

 彼女の周辺人物を洗ってみました。


 File1
 切裂早姫・『鋼のキリサキ』


 File2
 三条伊澄・『ブレイカー』


 お分かりですか?

 どちらもアナタが召喚したビジターなんですよ。

 ビジター同士は互いに引き合い、そして共鳴する。彼女は今でこそ安定した状態ですが、それだっていつかは崩れてしまうんです。明日かもしれない。明後日かもしれない。もしかすると今日この瞬間にも。

 引き鉄は近くにあります。切裂早姫と三条伊澄。

 もしも『魔女狩り』を、相楽カンナ(さがらかんな)を手元に置いておきたいのならば、あの二人を排除するのが絶対条件となってくるでしょう。

 わたしは止めませんよ。

 でも、簡単に事が済むとは思えませんね。

 切裂と三条は他のビジターとは全く違った何かを持っている。そして相楽カンナも然り。彼女と戦闘状態に陥った場合、五体満足でいられると思わないでくださいね? 彼女はわたしの魔導の全てをつぎ込んだ弟子なので。

 敵なのか味方なのかはっきりしろ?

 ふふ。そうですね。まあ、トモダチではありますね。相手が敵か味方を判断するのは、いつだって自分だけでしょう。

 おっと、そういえば新しい魔導書の搬入があるんでした。

 それではまたいつか。ロラン。