幼女No.3

『なんだ、この子も失敗か』

 しっぱい? なにが?

『う〜ん、適合はうまくいっているのだけどなー』

 ここはどこなの? あなたはだれ?

『う〜ん、この子も邪魔になっちゃったな、また引き取ってもらうかなー』

 わたしはだれ?



 明かりのついてない部屋の扉が開かれる。翠色の瞳だけが暗闇に浮いている。

 その瞳は怯えているわけでもなく、憎悪があるわけでもない。ただ困惑の表情。自分がどうしてこんなとこに、いるのかまだ理解できていない。

「お前、こっちに来い」

 躊躇するわけでもなく呼んだ男の前に立つ。

「本当に合成させられてんだな、鱗も尻尾もあるんだな、失敗作だから人間の姿もまだ残ってるんだな」

 男の発言に半獣姿の幼女は困惑する。確かに目の前の男には鱗も尻尾も見当たらない。

「今、拘束具つけるから大人しくしてろよ」

 男の言葉は幼女には届いていなかった。なんで私は他の人間と違う姿をしているのか、私は人間じゃないのか? 幼女はそれを考えていた。自分は化け物なのか。

「よっし、こっちに来いお前の新しいご主人様を紹介してやるからな」

 首についた鎖を引っ張られどこかへと連れて行かれる。

 ついた場所には、派手なお面を付けた男と自分のステータス表示を確認している男がいた。

「確かに指定の金額をいただきました。 こちらがご指定された商品でございます」

「さすが、先生の作品だ。失敗作でも相当の価値がある。失敗作だったことに感謝したいくらいだ」

 『失敗作』幼女の頭の中でその単語がグルグルまわる。思い出されるのは最初に見た人間の発言。

『この子も失敗か』『邪魔になっちゃったな』

 私は誰でなんのために、幼女の表情は固くなっていく。

「失敗作なので制御も何もできませんが、幸い自分の記憶はないみたいですのでお好きなように」

「今日から君の名はルチュルトラだ。いいね?」

 お面を付けた男は鎖を手に取り幼女に近づく、お面からかろうじて見える目はニヤニヤと下品な笑みを浮かべていた。