月だった。 真っ赤に染まった月だった。夜でもないのに空に浮かぶそれを形容する言葉は他に見当たらなくて、ぼろぼろと崩れて欠けていく様は、月の満ち欠けそのものを体現しているかのようだった。 ぼろぼろ、ぼろぼろ。 剥がれて、砕けて。 赤が滴った。