一、世界はそれを成り行きという
言われてメリーはロニを拭く手を止めて小首をかしげる。
「イメージ? うーん……暖炉で火がもえてる感じかなぁ……」
「なるほど」
イメージ。
「暖炉の薪が魔素を。燃える炎が温度上昇をそれぞれ暗喩している感じですか。それであの熱反応。うん、理にかなっています」
見えないものを扱うには想像するしかない。不可視のものがそこにあると仮定して扱う他ない。
ただ、浮かべるイメージは個々人で大きく変わってくるし、そのイメージを真似たからといって誰でも魔素に干渉できるとは限らない。
魔素に干渉できる条件として、二つの要件が不可欠となる。
まずは後天的にクリアできる条件、イメージの精巧性だ。
イメージがよりリアルであればあるほど脳内での魔素の認識が現実的になり、摩擦を起こし易くなる。これは繰り返しイメージを起こす事で練度が増していくという点から、努力次第では誰でもクリアできる条件である反面、それなりの時間(経験)を必要とする。
次に努力ではどうにもならない要因──先天的にクリアしなければならない条件、才能の問題だ。
魔素を動かすことができる、というのは、手先が器用であるという事とよく似ていて、当人の感覚に依存しているところが大きい。その才能が大きければ大きいほど動かせる魔素の量が増え、更にはイメージの定着をも手助けする。
これらの事から総合的に判断するに、
「メリーはすごい魔術師になるかもしれませんね」
ロニが褒めるとメリーは満面の笑みを浮かべる。
「ひひひ。わたし、お母さんみたいな強いまじゅつしになるんだ」